歯っ欠け女

 田んぼ会議。快晴。ぐにゃっとした一日。
 小林さんがシマシマのぴたっとしたお召物。腹がどうにもぽよんとしていたので、今日すげーおしゃれですねと5回くらい感想を伝える。夜まで何かとじゃれてみる。自分で髪を刈る小林さん。絶食して廊下で倒れる小林さん。かっちょいいぜ小林さん。
 
 帰宅。日に日に厳しくなる、硬く冷たい風にちぎれそうなチャリンコ行。
 豚中年のエサを買うため100均に寄る。
 たまにいる店員。妙齢の歯っ欠け女。薄幸の美女くずれ。年齢不詳。喋ると歯っ欠け声を出す。なにかとスースー言う。「おんふゃくおくじゅうおえんでふゅーー」「あいがとぅーおざいましあー」。そんな君がキュート。胸がきゅんとする。あーードキドキすらーー。エサその他を買って帰投。

 歯っ欠け女のコトを考えながら、くるくるを聴く。せつない気分。
 あの歯っ欠けはどんな音楽を聴くのかしらね。
 みひまるじーてーかしら? さだまさしかしら? いっしょに音楽を聴きたいわね。
 歯っ欠け女と、たわい無い話をして夜を過ごせたら、素敵だろうな。
 あの歯っ欠け声に包まれて。

 窓際から、外の暗闇を見ると、黒い窓に浮かび上がる、歯っ欠け女の青白い顔。
 風のうなり、枯れ葉が舞い散る音を聴きながら。その歯っ欠けの秘密を、そっと尋ねてみたい。

 会話が途切れたら、散歩先の、名も知らない街で拾ってきた、くるくるをかけよう。
 歯っ欠けといっしょに、耳を傾けてみよう。
 「えぐざいるがききたいわ」と言われるかもしれないけれど。

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