たかなわ

 具合悪いのでじっとしてるつもりだった。
 じつと手を見てすごしてやろうか、コノヤローなんて思ってたんだけど、天候もイイ塩梅だし、ちゃりんこで発進。先週に続き、高輪まで中年が南下。

 もちろん、高輪●●裏の低地を見るつもり。今は公園になっている谷戸地形の底はかつて沼だったという。そこに隣接してひっそり身を寄せあう数件の木造家屋。回りの墓所を管理する隠亡の一族のアレがアレするという地所。
 休日の昼下がり、件の公園には遊ぶ子供たちの歓声でなんだか賑やか。そうか、今日から夏休みなのかしら。その音に紛れるように、例の場所をゆっくり見て回ることが出来た。なにしろ、人気がない時のココときたら、木々の無気味なざわめき以外、音のない世界なのだ。




 夏の昼さがりといえどもなお暗い、そこはまさに別世界。
 未舗装の路地、すべてが古色蒼然と沈鬱に押し黙る木造家屋たち、それらを制圧する勢いでうねうねと繁茂する草木。その生い茂るにまかせた草木の生命力に目をみはる。廃墟ではないのだ。今も人が暮す場所であるコトにいい知れぬ感慨を覚える。
 その木造家屋群が一体いつからココに在るのかは分らないが、きっと何十年も変わらない風景なのだろう。そんな佇まい。
 遠い昔、広大な墓地に囲まれた、沼のほとりのココがいったいどんな雰囲気だったのか、想像を巡らす。
 ここにどんな家が建ち、どんな人々、どんな暮しや営みがあったのか。
 気が遠くなる。

 気が遠くなり、自分の心も、ゆっくりとこの場所に横たわり、深い呼吸をする。
 得体の知れない安らぎを覚え、立ち去り難い。

 帰り道、先週と同じ店でカレーを食う。「これなんですか?」「揚げた玉葱です。甘くて美味しいですよ」って、あのイイ味出してる店員さんはいなかった。今日の学生っぽい女のコも初々しくてよろしおます。先週と同じコンビニでソフトクリームを買い、食べながらチャリンコで家まで。

 K先生から駄洒落メール。最高だ。K先生に貰った珈琲を入れて飲む。with薄皮クリームパン。苦い珈琲に絶妙。
 久方ぶりにマイミク増える。うーーん、このお方も、すでに顔を知っていそうなお方(喋ってるかも)。またレコ屋で「あの人かなぁ?」って想像がたくましくなりそう☆