takaoxida2007-08-09

 ひる。
 ただあつい。
 あつさはいつも無目的。

 めまい、貧血、発汗。ただそれだけの、
 装置のような、わたくし。
 生理反応のスピードが、感覚を追い抜き、
 消し去る。
 日中の記憶がおぼつかない。

 夜、帰宅。
 嫁と氷のような会話。ふたことみこと。
 ことばは、発せられ、振動させるそばから空気を氷らせ、
 そして、氷ったことばは、床に落ちた。
 その、落ちて壊れる、
 音のような、
 落下する、空気摩擦のような、
 会話のねいろ。
 まるで、
 気化熱のような、
 会話のよいん。

 真夜中に、
 桃を食べるかと聞かれ、
 食べると答え、
 感情を押し殺し、
 息を殺し、
 おたがい
 闇を見つめるような眼差しで、
 桃を食べる。
 そんな、凍てついた、
 夫婦の会話。

 床でこなごなの
 ことばの残骸と、
 馥郁たる桃のかおりの現実感。
 舌の上にあふれる
 甘い肉汁だけに温度が宿る。
 一日の終わりの、
 そんな風景。



(画像はイヤダさんのアレより)