静電気の女
流れ弾を浴びながら、今日も週末という名の塹壕に飛び込んだ。
傷の状況は未確認。また来週、次の塹壕に向かって、この塹壕を飛び出す段になって、いろいろ気がつくんだろう。
田んぼを切り上げ、さるやんごとなきお方と、やんごとなき会合を持つために向かうは渋バレーくんだり。
やーひさしぶりぶり、何年ぶり?
相変わらずバカみたいですよねえ。そのうえ、日記ばかり書いてて、ますますバカみたいですよねえ。などと評される中年。
久しぶりに会ってはみたものの、中年の言いたいことはだいたいこの日記に書いてあるから、特に会って話さなきゃならないような込み入ったアレもなく。日記の方がむしろ本音。あなたの目の前のワタスはダミー。
途中、やんごとなきお方が「タバコ買ってくんわー」と出ていったきり、しばらく戻らないので、独りでぼけっとするさなか、だしぬけに、そうだ、この喫茶店は10年くらい前の春だか秋だったか、コートを脱いだ時、静電気で爆発していたアノコの長髪が、窓から差し込む西日に燃えるように光っていた、あの喫茶店だったんだ。と、まるで唐突に思い出す。
それから、ワタスとアノコは、・・・どうなったんだっけ?
必死に思い出そうとするが、ままならない。そしてやんごとなきお方が戻ってきた。
やんごとなきお方に、「その後の二人は、どうだったっけ?」と、聞いてみたいくらい、なぜか、その時、アレな気分でいた。
解散。
夜更け近く、チャリで帰投。例のバカでかい公園(yyg)を通る。ただ、無闇に巨大な、静かで冷たい暗闇に、落葉をまき散らしてゆく。落葉と車輪の回転する乾いた音だけが、すぐ後ろをついてくる。
それもこれも、それはそれ、これはこれ。
なんだかかんだ、結局は、塹壕まであともう少し、ならではの気分。