脱北仕様の休日



 もの音に目が覚めると、嫁がガタゴトしていた。
 家賃の件などの用事を済ませ、なにかいくつか言葉を交わしたのだが、
 また寝てしまったので、覚えていない。
 ついでに、嫁の顔がどんなだったかも、思い出せない。
 なんという、この、自由ってやつだろうか。
 高所から身を乗り出し、はるか下を覗きこむような、
 腹のそこがゾクゾクするような、自由だぜ。

 はれる。
 チャリで出かけると、つよい風に煽られっぱなしだった。
 いま一つ、うろうろ心にひたれない。強風にゃ頭来るし、じゃりじゃりするし、寒いし、
 具合わるくなってきたので、中途半端なところで引き返す。

 99に寄ると歯っかけさんがいた。(サマチャイさんとニアミスするとこだった!)
 歯っかけさんは、店の奥で、惣菜パンに『20%off』のシールをもくもくと貼っていた。
 嗚呼。なんて「『20%off』のシールをもくもくと貼る作業」が似合うんだろう、
 歯っかけさんは・・・。と、うっとりとする。
 今日の歯っかけさんは、しょぼしょぼした歯っかけさんだった。
 脱北仕様だった。

(もちろん、脱北仕様の歯っかけさんも、好きなのさ。
 だってオレだって見事な脱北仕様中年。おなじ脱北仕様どうし、何かと気が合うのさ。)
 ワタスは控えめに、作業する歯っかけさんの後ろ姿を見守った。
 歯っかけさんは、どう思っていただろう。
 20%offシールを待つ、悲しくもあさましい細民と思ったろうか。(それも大正解) 
 今日は首尾よく、歯っかけさんが割引シールを貼った惣菜パンを、歯っかけさんから買うことができた。無駄なお徳感が漂うぜ。ダブルボーナスですぜ。
 ありがとう。歯っかけさん。東京のおふくろさん。

 サッカーを観て。それから鰤の作業。
 鬼系じゃなさそうなんで、気が楽になる。(鬼系もドキドキしていいと思うけど)
 気が楽になると同時に、気が抜けたように、中年がだらしなくダラっとまき散らす・・・
 ・・・もう少し考えた方が良かっただろうか・・・
 前にも、個人的にふくかいちょう鰤をやったコトがあった。
 そういうコトがしたくなる人なのである。貴重なのである。(というコトは前にも書いた)
 ありがとう。ふくかいちょう。

 がじゆ先生のKAN日記を読む。精力的かつ計画的に連日寄稿されておる。すばらしい。
 米欄でのやりとりがかっちょイイ。小説の登場人物たちの会話みたいな。
 本気なのか、演技なのか、テレ隠しなのか。本音が本音過ぎると、ああいう風になるのか。
 じぶんの、腹のそこを、もういちど覗き込んでみる。
 なんもありゃしない。
 そのときどきの、うすっぺらい反射が、弱々しくひかるだけ。
 じぶんなんかいない。思いあがるな。
 ここを観に来てくれる親切な方々。あなたがたが、たぶんワタスです。

 それからもちろん、ユリレコも欠かせない。
 くどいようだが、ユリレコは、自分にとって、特別な感じがするタイプのアレだ。
 こんな気持ちは、シングル版『ハッシャバイ』のギロ以来である。
 だから、ついついギロと比べたくなってしまう。
 ギロはフルアルバムが出て(ひとまず全貌が見えたような気がして)、
 自分の中では落ち着いた感じがするんだけど・・・ユリレコ先生は、まだまだこれから。
 ドカンと一発、おみまいする気配に満ちているぜ☆

「つぎのこまふりだしもどり茶の間に」「メインストリートのやきとり者」
 こうして、並べてみると、ひゃっっとしちゃうゼ☆

夜には今日も星の数ほど星がある。
橋の袂でグッドバイナラ。

乾いた風にかき消されて最後の声も聞こえない。
byヒムロックとその周辺

私はその事をよく知っているし、
またその事実をきちんと受け止めている。

ユリレコ 『私はその事を知っている』より