吉坂公秀 "No more Blues" '79

 化け物というか、もの凄いモノを掘り出してしまいました。ここ半年の買いレコで個人的にはダントツでした、衝撃度では・・・。なんてコトのない町のレコード屋で試聴してたんですが、良くありますよね『試聴は3枚まで』とか書いてあるトコ。お目当てのは1枚で、「まあ、なんとなく他にも聴いてみるか」って感じで、見たコト無い盤をテキトーに選んだうちの一枚・・・針を落とした瞬間、「これはモノすげーもんだ」と旋律がはしったでゲすよ(笑)。お目当ての1枚は、もーどうでも良くなりました(笑)。
 ブルースのミュージシャンみたいなんですが、ここでの内容は果たして「ブルースど真ん中」というものなのでしょうか? 普通に耳にするブルースにはほとんど引っ掛からない僕なんですが、これは高いジャズ濃度のせいか、どこをとっても、どうにも引っ掛かる内容・・・ 僕がブルースに無知だから大袈裟に驚いてるだけなのかも知れませんがね。ブルージーなジャズ(変な表現だな)というか、異常な重力で磁場を狂わせる、黒光りする高質量グルーブ。・・・本当にこれは『孤高のブルース』といった佇まい。「ブルースてのは表現形式というより、存在様式である」てな錯乱したコトさえ思わず口をついて出る、強烈さです(笑)。
 深町純の1stの空虚、ロマンティシズム。生田敬太郎の初期盤のひりひりした都会感覚、グルーブ。フォーク、ブルース、シャンソンを折衝した、ひがしのひとしの猥雑な異種交配感とか・・・そういったものをさらに強烈に純化したような音楽が無気味に横たわっている・・・本当にソレは高密度、高質量で、触れると低温焼けどしそうな、黒いエネルギーが渦巻いている。
 闇夜を疾走する、黒光りするアコスイングA-2。囁くような、あるいは絞り出すような裏声の猥雑な歌詞が耳から離れない。 アコギのつま弾き、浮遊するピアノに彩られた、どこかデカダンな享楽主義バラードA-3も素晴らしい。アコーディオンバンドネオン?)の味付けが、熟した果実のような馥郁たる薫りをあたりに漂わせる自堕落スイングA-4。ウッドベースの強靱なグルーブに揺れるA-5は、歌詞に登場するアルコールを思わせる酩酊感。麻薬のようなジャジーグルーブ。
 ボトルネックギターと、強烈なベースの一撃おきにズブズブと沈み混んでいくような底なし沼B-1。うってかわり軽妙洒脱なアコスイングB-2もかすれ裏声のVoが頭から離れない。マンドリンマリンバなどが加わる南国ジャズ小唄B-4もナイス。黒いスイングB-5も、例のかすれ裏声な歌声がやはり唯一無二。

 アコスイング、ブルース、ジャズvo等お好きなら、聴いてみて、無視できない強烈な内容と思います。どうにも気になっていろいろ検索してるのですが・・・検索結果0件! なんじゃそりゃ、0件はないだろ。もしかして、なにか理由あって存在を抹消されてるようなミュージシャンなのか!? とか妄想は膨らむ一方(笑)。なにか御存じの方、是非ともご一報下さい!!