橙色と、うごく影の舞台




 あめ。
 嫁と電車にて。墓に浮かぶ島を観にいく。
 よる。ひさしぶりに南欧食堂「出る反る」でアレを食って、帰投。
 kne先生の昔の写真にひゃっ☆とする。知ってるこのひと!
 古い知り合いに激似なので、思わず、ぼんやりしてしまった。 

 ぽんこつデズ亀がよ、とアレな気分で写真の整理をしていたんだけど、
 夜の清川の写真を観たら、なんか先生っぽい雰囲気に撮れていてびっくりした。
 前のデヅ亀は、夜撮っても全然アレだったから、こうも違うか、と。
 で、途中で気が付いたんだけど、先生っぽく撮れたのは、
 どうも清川の外灯のせいらしい。

 現地におもむく前、下調べしてる時にぶつかった、
 「山谷地区の外灯は全部オレンジ色」
 という記述を思い出したからだ。
 それは、実際に現地で体験してみて、とても不思議な感じだった。
 路地が橙色にぼんやりと浮かび上がり、
 その、セットのような、橙色の舞台を、
 傾いていたり、曲っていたり、千鳥足だったり、
 おしなべて幽霊のような、顔の見えないおぼろな人影が、
 角から現れては、ゆらゆらと、別の角に消えていく。
 それに気を取られていると、各所で多発的に、また別の影たちが、
 角から角へ、ゆらゆらと消えていく。
 影たちは、橙色に染められた街の壁に、それぞれの分身を引き連れながら、
 実に、心地よい、適当な速度でもって、街を移動していく。
 視点の移動にともなって(走る自転車から観る)、動いていく街と、
 その、幽霊のような影たちの、幻のような動きと速度が、実に心地よくて、
 すこし、興奮しながら、夢中で夜の街を走り回った。
 
 なんで山谷地区の外灯が橙色なのか。
 もちろん、高速道路やトンネルのそれの、視認性とかそういうアレではない。
 多分、みなさまご想像のとおりのアレと思います。
 ワタスが子宮にいる時、母体の血管を透かしてとどく光のいろも、橙色だったのかしら?
 実際、地区を一歩出ると、普通の白色の外灯で、とても寒々しい感じがしたもんだ。

 地区では年間、結構たくさんの人達が、野天で亡くなられているという。
 ・・・ところで、地区のまん中にある葬儀屋。
 看板の「あおぞら葬祭」という名前には、
 パンチききすぎ、と思った。
 人が、現れたり、いなくなったり、生きたり、死んだり、
 そういうアレも軽く笑い飛ばしちまおう、みたいな
 街の気風みたいなアレに、すこしくらくらした。