あわおどり




 冷たい雨の中、傘もささずにk円寺の阿波踊りを見物してきた。
 手には、しょぼくれたくるくるが入った袋とカメラ。
 
 だいたい10年ぶりくらいだろうか。
 k円寺は学生時代〜田んぼ勤め初期に住んでいた、なじみ深い町。
 どの路地に入ってみても、思い出が陽炎のようにゆらゆらしている、
 ・・・ように思う。それはちょっと大袈裟かもしれないなあ、とも思う。
 学生の頃も、こうして見物したもんだ。
 あの頃と、街も人も、なんにも変わってないように見える。
 気のせいだろうか、ワタスの眼が悪いから同じに見えるだけで、
 やはりいろいろ変わったのだろうか?
  
 通りの端を、人込みをかきわけて進んでいく。
 気恥ずかしいので、絶好調の踊り手たちと目が合わないようにして。
 太鼓の大音響と、かけ声と、お囃子、出店の売り子の声が、
 ずっと耳の中で響き渡る。
 夢中で雑踏をかきわけていくと、だんだんと、
 なんでそっちに歩いていくのか、理由も目的も忘れてしまう。
 あの頃と全部いっしょだ。ぜんぜん同じ気分だ。
 それでもなお、立ち止まらずに、どんどん歩いていくと、
 今こうしている自分が、学生の頃の自分なんだか、おっさんの自分なんだか、
 溶け合って、分らなくなって、おっかなくなった。
  
 学生の頃のように、あの定食屋で食事をして、帰投。
 雨でびしょびしょになる。
 でかいラジオ(ぶっ壊れたテレビ)でオリンポックの閉会式を聴いた。
 予想どおり、ものすごく虚ろな気分になった。